—— 自分たちのこだわりを共有できる建築家に出会うと、どんな未来がかたち造られるのだろう?それを実現した施主様にリツデザインとの出会いからその仕事ぶりまでとことん語っていただきました。
土地選びから納得いくまで
—— リツデザインとの出会いを教えてください。
O様(施主) 社宅だったのでそろそろ住まいをと考えていた時、ネットで「玉縄テラス」という、建築家と作る分譲住宅という企画を見つけて、そこに吉田さんが紹介されていて。プランが素敵だったので、問い合わせ後に吉田さんに自宅に来ていただいたのが最初ですね。
吉田(リツデザイン代表) 土地探しから一緒にしましたね。
O様 そうそう、最初に鎌倉山のけっこう激しい傾斜の土地を一緒に見ていただいたんですが、吉田さんが「こういう風にリビングを出っぱらせて宙に浮いた感じにもできますよ」と具体的にプランを提案してくれて。難しい土地でも、『ここだとこういう家の可能性があるんだな』とイメージさせてくれました。
—— 吉田さんは、その場に立って瞬時にイメージできるんですね。
吉田 僕にはその能力があるんですね〜(笑)。その土地の一番気持ちい場所だけはわかるんです。
O様 最初に見た土地は岩もゴロゴロしていたので、工務店さんに来てもらって工事ができるかどうか見てもらったり。土地が安い分、他に費用がかかるなど、全体を考えなければいけない事を教えていただきました。吉田さんと出会う前は、不動産屋さんに行って土地など相談していたのですが、推しが強すぎて(苦笑)、不安感で手を引いたんです。そこから吉田さんと出会ったんですが「なんて推さない人なんだろう」と(笑)。「ご自身が納得するまで考えてくださいね〜」なんて具合で、居心地が良すぎて土地探しの状態が続きました(笑)。
吉田 僕らは一般の住宅メーカーが建てるような整形地である必要がないので「気に入ったら買いましょう」というスタンスなんですよ。
その土地に住んでいるクライアントになりきる
吉田 社宅の前はイギリスにお住まいだったんですよね。
O様 景観保護地区の一軒家に住んでいました。そこで家内がアンティークに目覚めまして。
吉田 O様のお宅は家具が素敵なんですよね。この家具が馴染む家づくりをと当初から感じていました。
O様 吉田さんは、施主が思い描く「こういう感じの家がいいなあ」という感触はどのくらいのタイミングでわかるものなんですか?
吉田 僕の場合は話を重ねてからですね。その土地に住んでいるクライアントになりきって設計をするんです。刑事物とかでよくある犯人になりきっての建築版ですね(笑)。生活の仕方や、何を重要視される方なのかを気にしています。
O様 色々お話していて感じたのは、建築のお話以外もたくさん聞いてくださったな〜という印象です。
吉田 余計な話をね(笑)。打ち合わせも4時間とか平気でやっていましたね。ご自宅で打ち合わせをすると、普段こんなふうに動くんだなとか、お子さんとこんなふうに接していらっしゃるんだなということが見えてきますよね。お客様の大事にしていることがわかってきます。
立体模型は必ず作って、中を覗いてもらう
—— 打ち合わせでは図面などすでに用意されていたんですか?
吉田 最初はヒアリングのための設計調書をもとにお話を進めました。住まいの状況や今後どのような暮らしをしたいかをまとめていただくんですね。
O様 そう、それがあることによって、自分たちの意識が整理出来ましたね。
吉田 そこをダラっとヒアリングしてしまうと「何畳と何畳と何畳の部屋が必要ですね」といったパズルの話になってしまう。そうではなく「そこで何をしたいか」なんですよね。
O様 子どもとはこういう距離感で暮らしたいとか、家族の気配を感じていたいとか、そういう要望をお伝えして、そしてカタチになっていきました。
吉田 それで、プランを2案ご用意しました。平面図だけだと空間的なイメージがわかりずらいですから、立体模型を2案分お持ちして。最後は複雑な立体的なプランを選んでいただき、模型をよく見てくださったんだな、と感じました。
O様 家事動線を考えた時に、階が細切れになっている方が動きもいいし、便利かなと思ったんです。あと、外光も北側まで届くのでいいですね。
言い残すことはもうない、というところまで話を引き出す
—— 照明などのインテリアはどの辺りから話し合われたのですか?
O様 リビングにある照明はすでに持っていたものを使いたいということを最初に吉田さんに伝えていました。上から垂らすのかなどの取り付け方は、工事の最中の現場で打ち合わせをしましたね。
吉田 現場で実際の空間を感じながら調整していきましたね。
O様 言い残すことはないくらい、聞いてくれました。全部受け入れてくれて、「それは出来ません、これは合わないと思います」と線を引かずに、後日、吉田さん風になって描き出して持ってきてくださるんです。自分たちの要望がちゃんと反映されていて、その後の暮らしの満足感に繋がっていますね。
家の居心地とは「安心感」
—— 外光を気持ち良く取り込んでいますね。窓も大きくて印象的です。
O様 そうなんです。表通りからは覗けない絶妙な位置にありながら、光がとても入りますし、夜は月が拝めるんですよ。とても気に入っています。
吉田 空が見える位置に窓を作るのを意識していますね。窓に目隠しを付けるのがあまり好きではないんですね。手に入れた土地は結構な資産であるのに、住人はその広がりを見ないで過ごしているんではもったいないんじゃないかと。資産は最大限に活かしたいと思っています。
—— テラスもたくさんありますね。
吉田 部屋を見渡した時、テラスの先に広がりを感じられるのが狙いですね。表通りに面しているテラスも、守られた外として、安心感のある空間になっている。結局、家の居心地って安心感なのかなと思っています。安心感の評価は、プライバシー感だったり逆に解放感だったりとそれぞれなので、その人になりきって安心感を詰めていきますね。
大工さんと共ににチャレンジしていく
—— 吉田さんは代理人という立ち位置も非常に得意としていますよね。
吉田 そうですね、代理人として、工務店さんの紹介から交渉などをお手伝いしますね。僕が修行の身だった頃は、業者さんを紹介したら紹介料なんかが発生するような時代でしたが、それでは全くお客様のためになっていないなと疑問だったんです。だから代理人と言っても紹介料はいただいていません。さて、実際のところ代理人としての僕は役にたちましたか?(笑)
O様 もちろんです!ハウスメーカーだと、自分たちの味方になってくれる人を見つけにくいですが、吉田さんがまず私たちの代わりになって色々とチェックをしてくださったので、プロが味方にいるという安心感がありました。素人では大工さんに伝えるのって専門的な知識もない中でなかなか難しいですが、吉田さんは我々の意向を翻訳してくれて家に反映させてくれましたからね。打ち合わせ時の長い雑談の中で築いた信頼関係があったからこそお任せできたかなと思っています。
吉田 そう言っていただけると嬉しいです。“家は3軒建てなきゃ、思い通りの家は建たない”と言ったもので、ある程度の経験値がないと大工さんを納得させられないんですよね。だから自分のような設計事務所を立てることで主導権を持つことも大事です。大工さんには新しいことを楽しく取り組んでもらえるように心がけます。そうすれば大工さんも楽しくノッてきてくれるんでね。
施主様のアイデアから学ぶことも
—— 実際住まわれて、特にお気に入りの場所はどこですか?
O様 お風呂のテラスはとても気にっています。夜は電気を消して入ると露天風呂みたいなんです。とにかく全部気に入っています。タイルひとつとっても「よかったねよかったね」といって暮らしています。ショールームにも同行してもらって。全てが納得の出来栄えです。
吉田 キッチンも悩みましたね。床タイルの敷き方とか、奥様の案が素晴らしくて逆に勉強になりました。
O様 ジェイミー・オリバー(イギリス人シェフ)のキッチンみたいにしたくて、いろんなアングルの写真資料を吉田さんに送りました(笑)。
紹介料は絶対いただかない
—— 吉田さんの印象は最初と最後で変わりましたか?
O様 変わらない!そこがすごいところだと思います。いつもこのテンションで(笑)。癒しのオーラがいつも出ていて、いつもリラックスできていました。
吉田 ありがとうございます!Oさんとは土地を選ぶタイミングでお会いできたので、家に求めているものが早い段階でわかってとってもスムーズでした。
O様 吉田さんとは駆け引きが全くなく、安心してお任せできましたね。
吉田 ありがとうございます。そうですね、たとえば僕が工務店や業者から紹介料を受け取ると、かけ引きが発生するので絶対いただかないんです。お客様の依頼だけで動けるというのは、自分にとっても楽なんですね。隠し事があると、途端に楽じゃなくなるから。だから全部オープンにしています。
O様 今回の工務店さんもオープンな方でしたね。最近は家族ぐるみの付き合いになっていますよ。気持ち良くこの家を建てることができました。
吉田 オープンにやっていると、オープンな人が集まってくるんですね。植木屋さんも不動屋さんもみんなそうですね。
O様 心から気持ち良くこの家を建てることができました。吉田さん、ありがとうございました!
Photography by Shinichi Hanaoka.